大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

地学を選択したことは恥ずかしいこと?

 本日の講義で,「高校の時に地学を選択していた人いますか?」って聞いたら,ゼロ。まあ,よくあることなのでそんなに驚きはなかったです。それよりもショックだったのが,講義後に提出してもらった感想文の中に「実は高校の時に地学を選択していたのですが,誰も手を挙げていなかったので挙げづらかったです」と書いていた学生さんがいたこと。少数派であっても誇りをもって「地学やってました!」って堂々と手を挙げてくれればいいのに。もしかしたらこの学生さん,高校の時に「なんで地学なんて選択してるの?」とか色々言われたのかもしれない(あくまで想像ですが)。そういう背景もあって,手を挙げづらかったということもあったのかもしれません(単純に周りに手を挙げる人が誰もいなかったので挙げづらかった,それだけだったのかもしれませんが)。

 高校で物理や化学,生物に比べて圧倒的に地学が選択されず,また高校で地学の授業をやっていない学校も多いという現状があります。これは私の見解ですが,ここまで地学が選択されない,授業が行われていないことの大きな理由の一つに,受験において地学を選択し勉強するメリットが物理や化学,生物に比べてあまりないということがあると思います。物理と化学や化学と生物の組み合わせの選択の方が受験する学部や学科の選択肢が幅広い。地学が大学入学後も必要となる学部学科といったら,理学部の地球科学系ぐらいじゃないでしょうか。

 日本は地震に火山,台風に豪雨といった地学現象に伴う自然災害が多発する地域であり,これらの災害に伴う被害を軽減するために地学の知識は必要だ,敵を倒すためにはまず敵を知ること,火山や地震,台風や豪雨による災害という敵と戦うためには敵である火山や地震,台風や豪雨を知ること,つまり地学をちゃんと理解することが被害を減らすために重要だ。こういったことが地学教育界隈ではさんざん言われてきました。しかし,そうはいっても目先の受験に合格することが最も重要であり,地学の重要性はわかるが現実問題としてよりメリットの大きい地学以外の科目を選択するということになると思います。

 となると,現在小学校と中学校では全ての児童生徒が地学を学ぶので,この段階でいかに地学教育の充実を図ることができるか,また受験の縛りから逃れた大学でできるだけ多くの学生に地学を学んでもらう機会を提供できるかが重要になってくると思います。もう高校で地学を選択してもらうことはあきらめる(笑)。特に,将来小学校や中学校で地学を教えることになる教員養成課程の学生には地学の重要性や面白さをしっかりわかってもらえる講義を提供することが重要。そのような思いをもちながら,日々自分のオモロイと思う地学を熱く語っているつもりですが,なんだか上手くいっていないような気がして悶々とする毎日。

 「なんや,地学って結構オモロイやん」「まわりに地学えらんでるやつおらんかったけど,勉強してよかった」と一人でも多くの学生に思ってもらえるように,私自身も地学という学問を楽しみながら学び研究し伝えていきたいものです。