大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

大阪人は「じゃますんで」といったら「じゃますんなら帰って」と言うのか?

 先日,私の講義を受けている学生さんが提出した感想カードの中に「大阪のおばさんは『じゃまするよ』と言われたら『じゃまするなら帰って』と言うのは本当ですがか?」という質問が書いていました。大阪人ならもちろん,大阪の方以外でも吉本新喜劇を少々知っている方ですと,

 

「じゃますんで~」

「じゃますんなら帰って」

「あいよ~,って,なんでやねん!!」

 

という流れ,よくご存知かと思います。

 

一応説明しておくと,「じゃますんで」とは「お邪魔します」ということであり,それに対して「邪魔をするならお帰りください」というやりとり。吉本新喜劇ではオーソドックスなやつです。

 

 吉本新喜劇の影響なのか,或いは大阪の文化なのか,このようなやりとりは私が小さい時から割と普通に友達どうしの会話の中でありました。友人の家に遊びに行ってトイレを借りる際,「トイレかしてな」「いいよ。ちゃんと返してな」「あたりまえや,返すわ!」というようなやりとり。現在私は静岡に住んでいますが,大阪を離れてわかってきたことは,このような日常の中にちょっとしたギャクやボケとツッコミを入れて,何かと笑いをコミュニケーションに混ぜることを大人から子供まで当たり前のようにやっていたということです。まさに大阪の文化ですね。

 

 こういう大阪の文化の中で生まれ育ったせいか,静岡の人たちのコミュニケーションに対して,笑いや冗談が不足していて何か物足りないなと感じることは否めません。講義で学生の前でボケてもツッコミがないどころか,大体は無視です。今の大学に赴任直後,ある教員に「静岡の人たちはボケられると大変困るからボケない方がいいですよ」と言われ,なるほどこういうことかと実感したものです(しかし,授業中の教員のボケに対して,他にたくさん学生がいる中で一人ツッコミを入れるのは,ちょっと勇気がいるので,無理もないよな)。

 

 しかし,実はこれが一番この記事で伝えたいことなのですが,大阪人のみんながみんな日常に笑いをまぜる,ボケるしツッコミをいれまくるわけではありません。大阪人でも引っ込み思案の人もいるし,ボケられたら黙って困ってしまう人もいます。とあるテレビ番組で,大阪人はピストルで「バン!」ってされたら必ず「ウ、ヤラレタ・・・」みたいに反応する,というようなことを実際に街頭でやってみて確かめるというのがありましたが,みんながみんな反応するわけではありません。「はあ?」という人もいますし,困って固まる人もいるでしょう。「じゃますんで」「じゃますんなら帰って」は吉本新喜劇での話なので,普通のおばちゃんがみんなそんなことを言うわけでもありません。同じように,静岡の人でもボケるしツッコミ入れるてくる人もいます。何かと笑いを放り込んでくる人もいます。

 

 背景としてのそれぞれの地域の文化を理解することも大事ですが,その地域の人がみんな同じで「ステレオタイプ」通りであるとも限らない,地域や人を重層的に多角的に見ることが重要ですね。でもこういう視点の大切さを認識できたのは,大阪を離れ縁もゆかりもない静岡に来たからです。色々な地域の人や文化に触れることの面白さ,この記事を書いていて改めて実感します。