大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

歴史は現在から学ぶほうがよい

 9年前にフェイスブックで以下の文章を投稿しました。自分で書くのも恥ずかしいですが,まあまあいい事書いているかなと思ったので,少々加筆修正してこちらのブログにも掲載したいと思います。

 

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 最近,歴史は現在から学んだ方がいいのでは,と思うのだがどうだろうか。学校の教科書のように,古代,中世,近代,そして現代,というように過去から現在までを「順序良く」学ぶというのではない,それとは逆の流れで学ぶかたち。


 プロのミュージシャンの中にはただ楽器が上手いだけでなく,そのミュージシャンががメインとするジャンルの背景となる歴史にとても詳しいプレイヤーが結構いる。例えばジャズミュージシャンについていえば,ジャズの成り立ちや歴史,ジャズで典型的に使われる楽器の歴史などについてとっても詳しい方がいる。

 

 今現在において何かを極めようとすると,過去からこれまでの流れ,成り立ち,歴史について知りたいと思うようになることはある意味自然なことかもしれない。物事を深めようという中で今自分がやっていることってそもそも何?という根源的な問いはしばしば発生するだろう。そういうわけで歴史を知りたくなる。逆に言うと,歴史を求める気が起こらない場合はまだまだその物事を深めようという気概,熱意が足りないと言えるのかもしれない。


 というわけで,学校で勉強する歴史も現代からの視点,今現在の事柄をまず深く見つめて,ではそれはどのような過程を経て今に至るのか,という流れの歴史の学び方がもっとあってもよいのではと思うわけです。いきなり紀元前とかの話から始められてもなんだか実感が湧かない,そして歴史を学ぶ意味がわからなくなる,歴史はつまらない,でも試験に出るからとりあえず覚える,という消極的な学びになってしまうということはないでしょうか。


 歴史のみならず学問一般についても同様なことが言えるかもしれない。大学では体系化された学問をお決まりの順序で教授されていくわけだが,体系化された学問の始めの方に出てくることって初学者にとってはそれを学ぶ意味がイマイチわからなくて「つまらない」と思うことが多いのではないでしょうか。一通り学問を修めた人間からすると,それらは基礎基本でとっても大事なのだということはわかるのだが。こういうわけで,大学の勉強が「ツマラナイ」「役に立たない」と思うようになる。もっと学問分野の最新の話題や疑問,未解決の課題といったところから話を始める,それらを理解,解決するにはこういうところからまず学び始める必要がある,というような講義の在り方もいいのでは,と最近思う。

 

 とまあ,9年前のこの自分の文章を読んでなるほどと思いつつ,では今振り返って日々の大学での自分の講義で上述のことを意識しているかというと,すっかり忘れていたなあと気付いてしまった(汗)。どちらかというと,いわゆるお決まりの順序で色々なことを授業で取り扱ってしまっていることが多くなっていた。というか,自分が面白いと思う視点での題材の取り上げ方をもっとしなきゃと改めて思う次第。

 

 自分の書いた文章を読んで自分で気づく。なるほど,その時その時で思ったことをどんな形でもいいから文章として形として残すことは大切です。