大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

やっぱり読書は大事という話

 「本を読め」とよく言われると思います。教員である私も常々学生に「本を読め」と読書の大切さを語っております。ここでは改めて,私なりに思う読書の重要性について述べてみたいと思います。

 読書が大事だと思う一つ目の理由は,人間にとって重要な表現方法の一つである文章表現における語彙と表現のバリエーションは読書を通して学ぶことができるからということです。良い文章を書くには良い文章をたくさん読む,ということです。良い文章をたくさん読めばそれだけ豊富な語彙とよい表現の仕方を身に着けることができます。それらの豊かな語彙と表現パターンの蓄積に基づいて,自分の伝えたいことを的確に表現した文章を書くことができるようになります。以前,あるプロのジャズギタリストの方が「ミュージシャンというものは家にこもってレコードにかじりついて一流プレイヤーの演奏をコピーしまくるという一時期があるものだ」と仰っていました。一流の演奏家は先達の作り上げた演奏の体系をしっかり自らの基礎として受け継ぎ,それを土台にクリエイティブな演奏を創造しているのです。文章も同様,というか,文章のみならずあらゆることに通ずると思いますが,これまでに築かれてきた体系を基盤としながら個々の創造性が発揮されるのだと思います。

 読書が大事だと思う二つ目の理由は,読書を通して創造性を高めることができるからということです。小説を読んでいる時,登場人物のふるまいやその人を取り囲む状況,そこに見える風景,人物どうしの関係性,描かれる自然や街の様子など,自分で頭の中に様々な情景を想像します。文章を読んでその内容を理解しようとするとき,文章に書かれていることを読んで解きほぐしながら頭の中で組み立てて情景を作り上げていると思います。この頭の中で情景を組み立てる時には,個々の経験や知識,感覚などあらゆるものが動員され,まさにひとりひとりの創造性が大いに発揮されていると思います。映像の場合,この情景を自分の頭の中で組み立てる必要がなく(既に映像という形で情景は作られ与えられている),ぼーっと見ていればいいわけです。材料だけ与えられて調理は自分でやる場合と,既に出来上がった料理を与えられる場合を比較するとよくわかると思います。材料だけが与えられた場合,まずこれらの材料から何を作るか,何を作ることできそうか,自分の頭で考えます。何を作るかが決まった後,それをどう作るか方法も頭の中で考えながら調理を進めていくわけです。あーだこーだ考えながら試行錯誤しながら進めていくわけで,このプロセスの中で創造性が発揮されます。そしてこのような自分の頭で考えて作りあげることを積み重ねることで創造性が高まっていきます。本当に料理のうまい人というのは,冷蔵庫にある残り物からパッと美味いものを作るのだということをどこかで聞いた(読んだ)ことがあります。残り物という限らた条件の中で,それらを組み合わせて本当に美味しいものを作る,そのためには食材に関する知識や食材を的確に調理する力が必要であることに加え,相当な創造性が必要だと思います。

 読書を通してたくさんの文章にふれて語彙と表現方法を豊かにすること,文章を読み取りそこに書かれている内容を自分で頭の中に作り上げていき,これを積み重ねていくことで創造性を高めることができること,これらが私が読書は大事と考える理由なのです。