大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

星座が季節を通して動いて見えるわけ

 夜空に輝く星座を観察していると時間とともに見える位置が変化していることに気付きます。ある時に南の方に見えていたのに数時間後には西の方に動いたように見える。これは星そのものが動いているのではなく,地球が自転をしていて,その自転する地球にのっている我々も動いていて,動いている我々から止まっている星を見ると星が動いたように見えるわけです。ある夜に星が時々刻々動いているように見えるのは地球の自転のため。さらに,ある日の夜だけでなく,毎月同じ日の同じ時刻にある星座を継続的に観察すると,その星座の見える位置が月ごとに動いていくように見えることに気付きます。

 冬の代表的な星座の一つであるオリオン座。下の図はオリオン座を11月から5月まで毎月同じ日の同じ時刻にどの位置に見えたかを示した図です。1か月ごとにオリオン座が西の方に動いているように見えます。また,11月には東の地平線上に上がってきて見え始めてきたかなという感じ,5月には西の地平線に沈んでいってしまうなという感じです。つまり,5月から11月の6か月の間にオリオリオン座は180°回転したように見えたわけです。6か月で180°ということは1か月あたりで30°(180°÷6か月)。つまり,オリオン座は1か月ごとに西に30°ずつ動いているように見えるというわけです。このような星の季節を通した動きを星の年周運動といいます。

 

 星の年周運動はなぜ生じるのか。星がある夜に時間とともに動いているように見えるのは,星がそのように動いているのではなく地球の自転によるものということを先に述べましたが,実は星の年周運動も地球の動きによるもの,特に地球の公転によるものです。地球の公転とは,地球が太陽の周りを1年かけて1周することです(下の図参照)。

 

下の図は星の年周運動と地球の公転の関係についてまとめたものです。この図の中で,地球がAの位置からBの位置まで1か月かけて公転した場合を示しています。地球は1年で太陽の周りを1周する,つまり12か月かけて1周360°回転。ということは,1か月では360°÷12か月で30°ずつ公転することになります。よって,地球は位置Aから位置Bまで太陽の周りを30°回転します。またこの図は地球の北極真上から地球の公転の様子を見たものです。地球を北極真上からみると自転の方向は反時計回り(時計の針の進む向きと反対の向き)です。またこの自転の向きは西から東の向きでもあります。太陽は東の方から見えてきて西の方に見えなくなっていく。これは太陽がそのように動いているのではなく地球が自転しているから。止まっている物体を動きながら見る時,その物体が東の方から見えてきて西の方に見えなくなるということは,西から東に動きながら止まっている物体を見ているということです。よって,地球の自転の方向は西から東の向きとなります。

 まず地球がAの位置にある時,地球から見て太陽の見える方向と反対の方向に星が見えていたとします。そして1か月後に地球がBの位置まで公転する。1か月後のBの位置から星を見ると,太陽と反対の方向には星は見えません。Bの位置から見えて太陽の見える方向と反対の方から西の方にずれた方向に星が見えるようになります。つまり,1か月後には星が西の方に動いたように見えるわけです(1か月前には太陽と反対の方向に見えていたが今は見えず,その方向から西の方向に見える。つまり,1か月で星が西に動いたように見える)。

 さて,星というものはふつう地球からうーーーーんと離れたところにあります。地球から4光年(1光年は光の速さで進んで1年かかる距離)離れたところの星でも近距離星とよばれ割と地球に近い星とされています。4光年とはざっくり40兆km!これだけ地球から遠く離れた星ですと,位置Aから見る方向と位置Bから見る方向の違いは微々たるものであり,もう同じ方向と見てよろしいということになります。つまり,位置Aから星が見える方向と1か月後の位置Bから星が見える方向は平行と考えてよいということになります。

 このように,位置Aの地球から星を見る方向と,公転して1か月後の位置Bの地球から星を見る方向は同じと考えることができます。そうしますと,上図の右下の図で示した通り,位置Bから見ると星が1か月前に見えた方向から西に30°動いたように見えます。これは位置Aから星を見る方向と位置Bから星を見る方向が同じ(平行)なので,位置Bから太陽の見える方向と反対の方向と星が見える方向の間の角度と,位置Aと位置Bの間の角度(30°)が同位角の関係で等しくなるからです。

 

 最後にポイントをまとめると,

  • 地球は1か月で30°公転する(360°÷12か月=30°/1か月)
  • 地球の自転の方向は西から東
  • 1か月公転後の位置からある星を見ると,1か月前に見えた方向から西に動いたように見える。
  • 星は地球からとても遠くになるので,星の見る方向は変わらない(と考えることができる)。

 

以上のことから,

 

星は1か月で西に30°動いたように見える。これは地球が公転していることによる

 

となります。