大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

太陽はなぜ東からのぼり西にしずむ?

 太陽は東からのぼって西に沈む,とってもとっても当たり前のことですね。絶対にあり得ないことを「たとえ太陽が西からのぼっても~」というように言うぐらい,絶対的に当たり前田のクラッカーですね(わかる人だけわかればよい!(笑))。

 

 では,なぜ太陽は東からのぼって西にしずむのか。太陽がそのように動いているから?いや,太陽は動いているのではなく地球が動いていて,その動いている地球にのっている我々も動いており,我々が動いているから太陽が動いているように見える,というわけです。走っている車から外の建物や木などを見るとこれらが動いているように見える。しかし,建物や木が動いているのではなく走っている車に乗っている私たちが動いているわけです。動いている立場から止まっているものを見ると,その止まっているものが動いているように見える。

 

 でも,よく考えるとおかしくないですか?校舎の4階から運動場を見ると同級生が走っている。それを友達と二人で見ていて,「お,アイツ頑張って走っているね」とあなたが言う。すると一緒に見ていた友達が「君,何を言っているんだ!アイツが動いているんじゃない。動いているのは我々、我々がいるこの建物。この建物が動いているからアイツが動いているように見えるのだ!!」なんて大真面目に言い出したらどうします?まあ,極端なたとえ話ですが,言いたいことはこういうこと。動いている物を見た時にその物自体が動いていると思う,これが私たちの自然な感覚だと思います。動いているものを見て,それが動いているのではなく自分の方が動いているから動いているように見えると考えるのはちょっと不自然ではないでしょうか。しかも,車や電車に乗っている時のように明らかに自分が動いているということを認識しているならまだしも,我々は地球の自転という動きを全く感じないのに,地球の方が動いているから太陽が動いているように見える,って・・・。じゃあ,地球の自転感じます?今日の地球の自転の様子どうですか?感じない?では,なんで地球が自転しているってわかるのですか?地球の自転を証明してください!

 

 おっと,話がかなり外れてしまいました。太陽が東からのぼって西に沈むという至極当たり前のことでも,よくよく考えると「あれ?」と思うことが世の中にはたくさんある,そういう「あれ?」についてアレコレ疑問を持って深掘りして考えることから科学は始まる,ということを言いたかったのです。しかしこの記事では「太陽は東からのぼって西にしずむように見えるのはなぜか」ということに焦点を当てたいので,地球の自転の証明については別の記事で改めて解説させていただければと思います。ここではひとまず,地球は自転,つまり1日に1回転しているということを前提に話を進めていきたいと思います。

 

 太陽が東からのぼり西にしずむ。このような太陽の一日の中での運動を太陽の日周運動といいます。太陽の日周運動は地球の自転によるものです。

 

 さて,突然ですが,地球を北極のう~んと上空真上から見下ろすと,地球はどんなふうに見えるでしょうか。想像してみてください。難しいですか。地球儀を持っている人は地球儀の北極の上の方から見下ろしてみてください。地球儀を持っていない人のために実際に地球儀を北極真上から見た画像を以下に用意しました。

 この写真のように,地球を北極の真上から見下ろすと,ちょうど真ん中に北極がくるようにみえます。このような地球を北極の前から見たときの様子は今後の説明で重要でとなりますので,ぜひ理解してください。

 

 地球は自転をしていると述べましたが,地球の自転の向きは地球を北極真上から見た時に「反時計回り」(時計の針が進む方向と反対向き)の方向になります。ちなみに,ちょっと想像することが難しいかもしれませんが,北極と真逆の南極の真上から地球を見た時の自転の方向は「時計回り」となります。つまり,北極に立った時と南極に立った時で自転の向きが反対になるわけです。実は,北半球と南半球で自転の向きが変わってくることが地球上の色々な現象に影響しています。例えば,低気圧の渦の巻き方の違い(北半球では反時計回り,南半球では時計回り)なんかがそうです。

 

 ここからの説明は以下の図を用いて説明します。

 

 

 この図には,北極真上からみた地球の図(先ほど説明した通りど真ん中に北極が書いてあります),そして右側に太陽を示しています。自転の向き(反時計回り)も要確認。地球の太陽の光が当たる半分側を斜線で示しています。この斜線の部分は太陽の光が当たるので昼間のゾーン,逆に太陽と反対の方を向いている地球の半分側には太陽の光が当たらないので,この部分は夜のゾーンとなります。

 

 図中の①の位置にいる人は自転の動きとともに①→②→③→④というふうに反時計回りに回転し,④のあと①に戻ってきます。このようにして自転とともに1日で1回転します。

 

 ①は太陽の光の当たらない夜のゾーンから太陽の光が当たる昼のゾーンに入ってくる位置です。①の位置から北極の方向が北であり,北に対して右手の方向が東。というわけで,①の位置にいる時に東の方に太陽が見え始めてきます。つまり,①は「日の出」の時の位置となります。自転とともに動いてきて②の位置にきた時,この位置から見て南に太陽が見える。これが太陽が「南中」する時。さらに自転とともに動いて③の位置にくる。③の位置は昼のゾーンから夜のゾーンに入っていくところ。この③の位置からは太陽が西に見えており,夜のゾーンに入っていくにつれてだんだんと西の方向に太陽は見えなくなっていく。つまり,③は「日の入り」の時の位置です。その後夜のゾーンを動いていき,④はちょうど夜のゾーンのど真ん中で「真夜中」の時の位置,およそ0時ごろの位置となります。この後①に戻ってきてまた朝を迎えるというわけです。

 

 このように,「太陽が東からのぼって西にしずむ」ように見えるのは,太陽がそのように動いているのではなく,地球が自転をしている,その自転をしている地球にのっている我々も動いていて,動いている我々から太陽を見るので太陽は動いているように見えるというわけです。太陽の日周運動は地球の自転によるものなのです。