大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

多様性とバランス

 2021年の夏にダイエットをしました。1か月で10キロの減量,約8%の体脂肪率の減少。この時,筋トレや食事について色々と改めて勉強するようになりました。食事について思ったのが,結局色々なものをバランスよく食べるということが大事ということです。

 食事のみならず,何かにつけてバランスというのは重要だと思います。私のイメージするバランスの取れた状態とはやじろべえがうまく釣り合っている状態です。ある点にある方向の力が働き続けるとやじろべえはバランスを崩してしまいます。ある点にある方向の力が働いた時,別の点にその力を打ち消すような方向の力が同時に働けば,やじろべえは何とかバランスを保つことができます。色々な点にあらゆる方向の力が働ければ,それらが打ち消しあってバランスが取れた状態が保たれるわけです。

 ダイエットや健康の維持に関して,バナナがいいやらトマトが痩せるやら,~は~にいいというような話はホント山のようにたくさんあります。健康にいい,ダイエットに効果的と言われているからといって,それらが科学的に証明されたものだとしても,バナナばかり食べ続けることは,先のやじろべえの例で言うと,ある点にある特定の方向の力ばかりが働き続けるようなもの。色々なものを食べるということは,やじろべえで言えば色々な点にあらゆる力が同時に働いてバランスが取れている状態。

 組織や社会についても同じようなことが言えると思います。ある特定の意見や考えだけが支配すると,バランスを失って組織や社会の崩壊を招くかもしれません。崩壊とまではいかなくても,組織や社会に属する人々が幸せになれない不健康な状態に陥るかもしれません。色々な意見や考えがあって組織も社会もバランスが保たれ,健全に維持される。

 ただ,現状維持にとどまり続けることが良くないこともあります。その場合には,ある点に特定の方向の力を加えて一時的にバランスを崩すような刺激が必要かもしれません。しかし,そのような場合でも,その刺激のために加えた力に対する別の力が働いて,バランスの取れた状態が再び取り戻される。つまり,組織や社会を変革してよりよい状態にしたい場合でも,特定の意見や考えだけではダメで,それに対抗する意見や考えも必要であり,これらの意見をぶつけた議論が必要不可欠ということです。今のコロナ禍の状況における感染対策について,様々な意見をぶつけた健全な議論が大きく欠落しており,個人的には対策は上手くいっていないと考えています。

 やじろべえにしろ,食事にしろ,そして組織や社会にしろ,多様な力の働き方,多様なメニュー,多様な意見や考え方,即ち多様性がバランスの取れた状態の維持発展に必要不可欠であると思います。

 ところで,以下,私の妄想ですが,竜巻やガンは多様性を失ってある一方向に現象が進んでしまって生じる自然現象ではないかと想像しております。大気中には大小の様々な渦が存在している。通常はそれらの渦が打ち消し合ってバランスの取れた状態になっている(と思っています。間違ってないかな・・・)。ところが,何かしらのメカニズムで渦が同じ方向に揃ってしまうと,それらが強め合って竜巻という渦になる,そんなイメージ。がん細胞は常に生じているが,それらは通常消されているのだそうです。しかし,何かのメカニズムで細胞のガン化が一方的に進んでしまう。渦にしろ細胞にしろ,或いは人にしろ,多様性を失ってバランスを欠いてある一方向にどんどん進んでしまうことがある。自然現象としては大変興味深いが,実際その中に取り込まれてしまうと大変厄介です。