大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

最強の町医者のような教員を育てたい

 もうかれこれ10年以上,教育学部の教員養成課程の大学教員として将来小学校や中学校,高校の教員を目指す学生と日々過ごしております。学生たちにどんな教員になってほしいか,それは「最強の町医者のような教員」です。

 「あれ,ちょっと体調がおかしいな」と思った時,まずはかかりつけのお医者さん,身近な診療所を受診すると思います。自分で「これは~という病気にちがいない」と診断して,いきなり大病院の専門科に行く人はあまりいないと思います。かかりつけ医や近くの診療所に行って,症状や痛いところなどをお医者さんに説明して,それを聞いた医師があれやこれや考えて,場合によっては血液検査やレントゲンなんかの検査結果も見ながら診断を進めていきます。その後,治療方針を確定し実際に治療を行っていく,場合によって高度な治療が必要な時は適切な専門病院に紹介します。

 かかりつけ医や身近な診療所の医師,いわゆる町医者は,あらゆる症状をかかえた患者さんがまずはじめに訪れるところであり,その診断のためには幅広い知識と経験,技術が必要です。「私は消化器のことしか知らない」では,色々な人があらゆる症状をかかえてまずはじめに訪れる町医者として適切な対応は難しいと思います。

 色々な子供たちの多様な願いや訴え,抱える問題をあらゆる観点から考察し,その人にとって最適な解決の方向性や具体策を見いだし導くことができる教員,いわばスーパージェネラリストとしての素養を持った教育人材を育てていきたいと強く思っています。それぞれの子供たちの特性や秘めたる可能性をしっかり見極め,それをしっかり伸ばすように導くための幅広い知識と視野の広さ,柔軟性をもった学生を教育現場に送り出したい。必ずしもある分野に精通していなくてもいい,「この子にはこうやってあげればいいのではないか」ということを鋭く直感する,そのための幅広い守備範囲をもった学生を教員として育てたい。そういう直感をすることも大事。場合よっては子供をしかるべきスペシャリストにつないでもいい。子供が「騎手になりたい」と言えば騎手育成のプロにつなぐ。そのような「つなぐ」ためのネットワークの広さやそれを開拓する力も持ち合わせてほしい。多様な症状をかかえる患者を広い視点から考察して的確に診断治療,場合によってはしかるべき専門病院につなぐ,そのようなことができる最強の町医者のような教員です。

 私は主に地学の講義を担当しておりますが,地学の内容をメインに伝えているのはもちろんのこと,講義の「雑談」の中で地学以外の科学全般,広く社会に関することなど学生に少しでも色々なことに興味関心をもち視野を広げてもらいたいと思って色々な話題を振りまいています。そういう意味で,私は講義における「雑談」を結構重視しています。学生の講義に対する振り返りカードにも「雑談が面白い」という感想が割とあるんですよ。オモロイ雑談をするために,私も見識を広げるべく多様に読書をしてネタの仕込みを余念なくやっている日々です(そういう意味では,教員にとって読書は「お仕事」とも言えますね)。

 この記事を書いた後に思ったのですが,最強の「町医者」と言ってもいいですが,最強の「町中華」と言ってもいいかと。多様な中華メニューで客を魅了する。スゴイ個性的なラーメンでなくてもいい,昔ながらのしっかり旨いオーソドックスな中華そばを出してくれる。実はそんなお決まりだけど地味にうまいものの方が明日への活力を与えてくれるんですよね。