大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

海外にきてわかる日本のこと

 現在調査研究のためにインドに来ています。2020年2月,丁度コロナ騒ぎになる直前に訪問して以来3年ぶりとなります。コロナ前までは年に2回毎年訪問しておりました。私の研究対象地域のもう一つはバングラデシュ。こちらは昨年8月にコロナ以降2年半ぶりの訪問でした。来月はバングラデシュを訪問予定。

 バングラデシュの初訪問は2002年7月,インドは2007年8月なので,それぞれ20年と15年のおつきあいとなります。こんなに何度も訪問していると,日本との違いについて大きなところから細かいところまでが色々と感じられて,それらがこれらの国を訪問するひとつの楽しみといいますか,魅力にもなっています。

 バングラデシュに来てまず驚いたのは交通状態。3車線の道路なのに車が3列に並んで走っておらず,我先にと割り込んだりしていて混沌状態。そんな状況に加えて,信号が動いていない。警官が交通整理しているが,その指示を無視している車もある。みんなクラクションを鳴らしまくって割り込んだり割り込まれたり。日本では信号がちゃんと動いているのは当たり前。というか,ちょっとでも不具合があれば大問題になるので,すぐに修理される。車線の中で整然と車は走る。これも日本では当たり前田のクラッカー。

 ホテルのお風呂場の中にシャワーとトイレがあることが殆どです。その位置関係が微妙で,シャワーのすぐ近くに便器があって,シャワーを浴びると便器がビショビショになることが多々あります。あと,便器とトイレットペーパーの距離がと遠くてウーンと手を伸ばす必要があったり,便器に座りつつ体を大きく捻らないと取れない変な位置にあったり、まあ,使い勝手を考えた配置になっていないことも多い。お湯が出る蛇口と冷たい水が出る蛇口,日本ならば赤と青の目印で区別されていますが,その区別がない。赤と青の区別があっても逆のこともある(つまり,赤い印のついた蛇口をひねると冷たい水,青い印のついた蛇口をひねるとお湯がでる)。「なんでこうなるの」の連続です。

 日本ではあらゆるものが整然と動き,物の配置も使いやすさが十分に考慮されている。日本にいるとこれが当たり前と感じるというのは当たり前のことですが,こうやって日本と状況の違う海外に出ると,その当たり前が当たり前でないことに気づかされる。日本の常識は世界の非常識。でも,そこに日本のよさ,今まで当たり前すぎてわからなかった良い所が見えてくる。

 でもね,バングラデシュやインドには上で述べたような「なんでこうなるの」という不便は多くありますが,それが実はこれらの国の「魅力」だったりもするし,自分を成長させ視野を広げてくれるとも思うのです。割り込んだり割り込まれたりして混沌とした交通状態が実はあの特有の街の活気を作っている。日本にはない独特のワクワクさせる熱気。シャワーを使うと便器がビショビショになるのなら,シャワーを使わずバケツを借りてそこにお湯をためて,バケツから桶でお湯をすくって便器から離れた位置で体と頭を洗う,というテクを身に着ける。青い印の蛇口からお湯が出ても,「まあ,世の中こういうこともあるさ」と笑い話に変えて視野が広がる(笑)。

 何が良い悪いを超えて,違いを楽しむ。これはバングラデシュやインドを長年訪問して教えてもらったことの中で大切なことの一つです。