大学教員,科学と教育と音楽について語る

大学教員(気象予報士)でありギター弾きのワタシが,天気に科学に教育に音楽に,日々思う雑感を語ります。

物の状態を原子と分子でイメージしよう

 全ての物質は原子あるいは原子がいくつかくっついた分子からできているということを学校の理科で学習したと思います。原子というと例えば,水素原子(H)や酸素原子(O),炭素原子(C)など。分子としては,例えば水分子(H2O)がありますが,これは水素原子が2個と酸素原子が1個がくっついた分子です。これら原子や分子の観点で物の状態がイメージできると,色々な現象の理解を深めることができようになります。

 物の状態には気体,液体,固体の3つがあります。

 気体の状態とは,原子や分子が目にもとまらぬ速さで自由に活発に動き回っているような状態。気体の状態の物は目に見えない。水蒸気は水分子が気体の状態のものです。水蒸気は空気中に含まれていますが目には見えません。また,空気には窒素分子(窒素原子(N)が2個くっついて窒素分子(N2)になる)が約8割,酸素分子(酸素原子(O)が2個くっついて酸素分子(O2)になる)が約2割からなると言われていますが,これらの分子も気体の状態なので目には見えません。酸素分子や窒素分子にそれぞれ色がついていて目に見えたら,「おお,確かに空気の大部分が窒素ですな」ということがわかって大変面白いでしょうね。

 固体の状態とは,気体の状態と逆に原子や分子が固く手をつないで固くまとまっているような状態。水分子が固体の状態のものが氷です。氷は水分子どうしが固く結びついてまとまっている状態。

 液体の状態は気体と固体の間の状態であり,原子や分子どうしがゆるやかにつながっているような状態。気体ほど自由に活発に動くことはできないが固体ほど固くお互いに結びついているわけではない。水道の蛇口をひねって出てくる「水」は水分子が液体の状態のものです。

 ここでもう一つ,温度についても理解しておきましょう。温度とは,原子や分子がどれだけ活発に動いているかの目安と考えてください。つまり,温度が高い状態とは原子や分子がより活発に動いている状態。逆に温度が低い状態とは,原子や分子の動きが不活発な状態です。

 このように気体,液体,固体の状態を原子や分子の観点でイメージできると色々な現象が理解できるようになります。例えば,氷に熱が加えられて温度が上がって融解して水になるという現象を考えてみましょう。水分子がどうしが固く結びついてあまり動いていない状態(温度が低い状態)である氷に対して熱というエネルギーが加えられると,そのエネルギーをもらった水分子が活発になり,水分子どうしの固い結びつきから少し自由に動けるようになって液体の状態になるということです。さらに熱が加えられると水分子はますます活発になり,お互いの結びつきを完全に振り切って自由に活発に動きまわることができる状態,つまり気体の状態の水蒸気となるのです。

 空気が入ってパンパンに膨らんでいる風船。風船の中に含まれる気体の状態にある空気の分子は活発に動いており,風船を内側から押して膨らんでいるわけです(風船に激しくぶつかって風船を勢いよく押しているイメージ)。この風船を冷やすとどうなるでしょうか。風船の中の温度が下がり,それは風船の中の空気の分子が不活発になり勢いが減ってくるということであり,そうなると風船を内から押す力も弱くなるので風船は縮んでくるでしょう。

 このように,物の状態を原子や分子の観点でイメージできるようになると,それをふまえた上で色々な現象について理解を深めることができるようになります。理科がわかるようになるためには,ここで説明した原子や分子のような基礎となる概念をイメージできるようにすることが重要。そのイメージに基づいて色々な現象が理解ができるようになってくるわけです。